笑うこと

うれしいとき、楽しいとき、感動したとき、ほれぼれしたとき、ごきげんなとき。そんなとき。
胸が高鳴ります。
みぞおちのあたりから、肩に向かって、サワサワサワ〜って、金色の光の粒が、からだをまとう感じ。
フルフルって、からだがしびれる感じ。本当に、魔法にかかる感じ。
そんな、
"胸が高鳴る"いい話。


わたしはいま、4人部屋の病室に入院しています。全員女性ですが、年齢は様々。入退院(メンバーチェンジ)もじゅんぐりあります。


そんななか、つい先日まで、Nさんと言う、可愛いらしいおばさま(60代)がわたしの病室に居ました。
わたしは勝手に大好きでした。(ですが先日、リハビリの病院に転院されました。)

Nさんは、骨の難病を患ってらして、さらに今回の入院では10時間をこえる難しい大手術をされていて、それでも尚、脚はしびれていて、ひとりで立つこともできません。(少しずつリハビリをされて、現在は回復傾向にあるようです。)


そんな大変な状況で、ほとんど寝たきりなのに、
本当に本当に、明るい方なんです。
ケラケラよく笑うし、人なつこいけど、しつこすぎないし、なんというか、みんなに愛される少女のような可愛らしい方。まるで病気なんかじゃないみたいに、明るい方。

そんなNさんは自称テレビっ子で 笑、テレビをよく見てるんですが、病院ってイヤホンしないとダメなんです。
で、Nさん、よく爆笑してるんですよ。ケラケラと可愛い声で、大爆笑。ひとりで。周りは「え、なにが起こってるの?!」って一瞬なるんですが、「あ、テレビか。笑」って。
で、Nさんはいつも「ごめんね〜ひとりで笑ってうるさくて。ね、でも、いま、おもしろいから、○○チャンネル、みてごらん!」って、謝りながらその番組をみんなにすすめる。

わたしたち4人は、カーテンで仕切られてるんですが、カーテン閉めたまま、よく大声で喋るんです。(これ、病室ならではのあるあるかと。)

それで、
カーテンに仕切られたわたしたちは、しーんとなったと思ったら(イヤホンしてテレビみてるから)、全員同じタイミングで大爆笑。
これほんと、はたから見たら「何が起こってる?!?!」って不思議だと思います。
しーん→爆笑→しーん→爆笑
の繰り返しで、

案の定、とくにこの晩は、隣の隣の病室までわたしたちの笑い声が聞こえていたようで、ナースさんたちが来るたび来るたび、大爆笑。
「どうしたの〜笑?!そーんなおもしろいテレビやってるの〜笑?!」って。
人の笑い声がおもしろくて笑っちゃう現象。笑いが笑いを呼び、みんな、声を出して笑っちゃう現象。
わたしは、その状況に、


なんて幸せだ

と胸が高鳴って、
泣きそうになりました。
病院は、本当に、笑いが少ない場所です。そりゃそうです。ヘラヘラ笑ってる場合じゃない、って状況が多いのですから。
だから、笑う機会が少ないのです。
わたしも、気づけば、久々に、笑いました。
そもそも面白かったのは、
そのテレビ番組ですが、
わたしが嬉しかったのは、
みんなみんな、声を出して、
よく笑ったこと。
笑いが笑いを呼び、よくわかんないけど笑っちゃう、という、その状況が、病院で起こったこと。
それを無意識につくりあげたNさんと出会えたこと。
おかしくておかしくて、
最後はみんなして、テレビそっちのけで笑い合いました。
「もうやだー泣  なんだかおかしくておかしくて、笑っちゃう!笑」って、みんなして、笑い合いました。

カーテンにさえ仕切られているけど、
まるで家族の夕飯時みたいで、
おっきい家族が出来たみたいで、
本当に幸せになりました。
二度と同じメンバーで生活することはなく、今日そのとき限りのメンバー、本名も何も知らないわたしたちは、
すべてをこえて、家族のように、姉妹のようになったのです。


そして〆のようにひとこと。
「あ〜、よく笑ったよく笑った。修学旅行の夜みたいで、たのしかったぁ〜!!」とNさんが言った。
この方は、どこまででも、可愛い人だな、とわたしは思って、
「ほんと、修学旅行みたい!」って、
また、みんなで笑ったのでした。


笑うこと、笑えるということ。
それは、
まちがいなく世界を幸せにすると、
わたしは確信したのでありました。


追記
東京A橋駅のYねぇさんが、「笑うことについて」の話をプレゼントしてくれていました。気がつけば、いま書いたお話そのものでした。
わたしもYねぇさんのように、いつも、たくさん、笑っていようと、改めて思いました。ありがとうございます。
photo マリリンモンロー(撮影者不明)

Rei.Kikuchi_ Re:Life

キクチレイの"リ・ライフ" ◻︎◻︎→ ▷ 一時停止ボタンを再生ボタンへ。 ふたつの四角を三角にしていく記録。 2018年秋より、骨肉腫サバイバー。

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